2016-06-01[第718号]
天皇陛下と秋篠宮文仁殿下らが研究をすすめるハゼ類の種分化に関して、医学部医学科の中川草助教も共同研究者として加わった論文「ハゼ科魚類キヌバリとチャガラの核DNAとミトコンドリアDNAを用いた種文化の解析」が、遺伝子・ゲノム・進化に関する国際学術雑誌「Gene」の2016年2月1日号に掲載されました。
この論文は、2008年に発表された「DNA分子と形態の解析に基づくハゼ科魚類、キヌバリとチャガラの太平洋側および日本海側の地域集団の進化」に引き続いて発表されたものです。08年論文では、ミトコンドリアのDNAと形態的特徴に着目して、キヌバリとチャガラを分類しましたが、今回の論文では、さらに核DNAの塩基配列を解析し、それらの結果をあわせて総合的に考察した結果、キヌバリとチャガラの種の分化が先に発生し、その後日本海のチャガラとキヌバリの間で交雑が起こったと考えられることを明らかにしました。中川助教は、国立遺伝学研究所の五條堀孝特任教授らとともに同論文の研究段階から参画。今回は、核DNAの塩基配列の中で対象とする場所の決定や実験結果の解析や論文執筆に携わりました。
中川助教は、「DNAを用いた分析は幅広い分野で用いられていますが、今回の成果はそれだけでなく形態的な観察などさまざまな情報と組み合わせて考察する必要があることを示唆した重要な論文だと考えています。DNAの解読技術が高度化し、がんの治療をはじめ医療分野での利用も進んでいる今、私自身も既存の学問体系の中で培われてきた成果の蓄積を大切にしながら、DNAを活用した様々な研究に取り組んでいきたい」と話しています。