ごあいさつ 同窓会員の皆様へ

 卒業生の皆様におかれましては、日頃より東海大学ならびに政治経済学部の教育・研究活動にさまざまな形でご理解とご支援を賜り、誠にありがとうございます。

  毎年、学位授与式で優秀な新卒生に「同窓会長賞」を授与していただき、近年は学生の研究発表会(11月3日/於湘南キャンパス)も共催してくださるなど、学生の就職活動のサポートを含めて連携の幅を広げていただいております。学部を代表して心から御礼を申し上げる次第です。言うまでもなく、皆様方の社会でのご活躍は、学生たちに東海大生であるという誇りと自信、勇気を与えてくださっています。今後も学部と学生にご注目とご協力を賜りますよう、この場をお借りして学部教育の現況や方針、将来像などについて紹介させていただきます。

定員を上回って全国から集まる学生たち

 政治経済学部では現在、政治学科・経済学科・経営学科を擁して、社会への関心を喚起するリアリティある実践的教育を展開しています。

 各学科の定員は150人で、例年同様に今年も定員を上回る新入生を迎えることができました。全体の学生数は2100人を超えており、2013年春の時点では宮崎県を除く全都道府県の出身者が在籍しています。東海大学同窓会は都道府県ごとに支部組織があると伺っておりますので、今後もすべての支部に本学部の卒業生をお迎えいただけると思います。

 また、現在の教員数は政治学科が14人、経済学科が11人、経営学科が12人です。研究と教育の両面でバランスの取れた教員が顔を揃えております。近年は女性教員も増え、学部全体で7人の女性教員が学生の指導に当たっています。皆様には懐かしい先生方が日々ご活躍ですので、機会があればぜひ研究室をお尋ねください。


<写真:学位授与式にてゼミで集合写真>

学部の教育目標とその特色

 政治経済学部の教育目標は「『社会力』をもった人材の育成」です。学部ではこの「社会力」を、「国内外で生ずる諸課題の解決に取り組み、社会の発展に貢献できる力」と位置づけています。こうした力を養うために、基礎的な知識やものの見方、考え方、コミュニケーション能力を育てる教育を実践しているのです。

 少人数教育も本学部の特徴のひとつです。東海大学では2010年度のカリキュラム改訂において全学で1年次生の「入門ゼミ」を導入しましたが、政治学科ではそれ以前から同様のゼミを必修として、きめ細やかな導入基礎教育を少人数で行ってきました。現在は3学科すべてに「入門ゼミ」が置かれています。高校に「政治経済」という科目がありますが、現実には基礎知識を十分に持たずに入学してくる学生が少なくありません。「入門ゼミ」はこれを体系的に習得させ、その後の学習の基盤を培うための重要な役割を担っています。

 さらに本学部では、全学科で3・4年次生にゼミナールを必修とし、卒業研究に取り組ませています。政治経済学部やそれに類似する学部を置く私立大学は数多くありますが、ゼミを必修としている大学は少数です。また、学生と社会との接点を積極的に設けている点も本学部の特色です。政治学科ではインターンシップを単位化しており、湘南キャンパス近隣の6市から協力を得て、夏休みを利用した自治体での実習を行っています。経済学科や経営学科においても外部講師を招いての講義や工場見学など、学生が社会を実感して学び、将来を考えられる機会を提供しているところです。

私の専門分野とゼミの教育方針について

  いま、近隣都市との協力体制についてお話をしましたが、私の専門分野は行政学です。現代社会では政府に対する国民の要望が多様化し、新しい需要も次々と生まれています。同時に行政改革によって政府の役割を限定し、公共サービスの提供を外部化する傾向が進んでいます。こうした社会状況の変化を前提として、「公共サービスの供給体系」について研究しています。究極的には、「政府の役割とは何か」という根本的な問題の答えに近づきたいと考えています。研究のアプローチとして、「第三セクター」といった準政府組織やNPO、ボランティア組織などの非政府組織について分析し、それらと政府組織との関係について分析しているところです。

  そして私のゼミでは、「日本の行政(自治体・国)が作成、実施に関わる政策の分析」を全体のテーマに掲げています。具体的には、学生たちは個別の政策領域を選択し、それを各自の視点で分析して卒業論文にまとめています。ゼミの教育方針は、この分析の過程で、問題発見と解決能力、論理的思考力、表現力などを培い、学部や東海大学が目指す人材育成を実現しようというものです。

 私は、学生たちの「記憶」と「記録」に残るゼミにしたいと思っています。記憶については日々の指導の中で、またゼミ合宿、国立国会図書館の見学会や就職活動報告会、そして酒を酌み交わす懇親会などを通じて、学生たち一人ひとりの心に刻むことができたらと努力を重ねてきました。また記録については、全員の卒業論文を編集・製本して卒業時の記念品としています。すでに刊行も10年を超えて「前田ゼミ全集」として蓄積されてきました。


<写真:国立国会図書館にてゼミで集合写真>

社会人の視点から後進の教育にご協力を

 私が、政治経済学部の教授に着任したのは2003年です。2008年からの5年間は政治学科の主任を務め、この春から学部長に就任しましたが、今、改めて責任の重さを痛感しています。春のガイダンスで500人を超える新入生たちと対峙した時にも、この学生たちが「東海大学に入学して良かった」と心から満足して卒業できるように、責任ある教育・研究活動を実践しなければならないと強く心に刻みつけました。

 私は、学生の満足度を上げるためには、通常の講義、演習の充実はもとより、就職活動の成功が不可欠であると考えています。大学教員の中には違う考えをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし私は、学生一人ひとりが、自らの将来を見据えた上で学ぶことが大切だと思っているのです。現実問題として、就職に対する意識を早期に涵養し、高いモチベーションが保てる教育に力を注ぐべきだと考えています。

 そのためには、我々教職員が全力を尽くすことは当然ですが、ぜひとも、卒業生の皆様にもご協力を賜り、連携を図らせていただきたいと願っております。我々が目指す「リアリティのある実践教育」を進め、その大切さを実感させながら学生の将来設計に結びつけるためには、実社会との関わりが不可欠です。リアルに社会を学ばせるために、ぜひ社会人として活躍しておられる卒業生の皆様の視点とご協力を賜りたいのです。

 私は、皆様の母校愛や帰属意識に頼るだけでは失礼だと考えています。大切なことは我々教職員自身が皆様と強い絆と信頼で繋がり続けること、学生時代からコミュニケーションの連鎖を重ねて行くことが、次代に学部の系譜を繋げていく必要不可欠な行動であると実感しています。

 卒業生の皆様に「後輩たちの面倒を見ようじゃないか」と思っていただくために、将来の卒業生である目の前の学生たちに、誠実に真摯に対峙して行く所存です。皆様にはどうか、本学部の教育方針にご理解を賜り、教育活動にご協力をいただきますよう重ねてお願いを申しあげます。最後になりましたが、政治経済学部同窓会のますますのご発展と、会員の皆様のご活躍、ご健勝をお祈りして、私の話を締めくくりたいと思います。


<写真:地区後援会懇親会(岩手盛岡にて)>

▼プロフィール
前田成東(まえだ・しげとう)教授

 1960年東京生まれ。中央大学大学院法学研究科博士課程後期課程退学。日本学術振興会特別研究員、(財)行政管理研究センター研究員・主任研究員、山梨学院大学法学部助教授・教授などを経て2003年から東海大学政治経済学部教授。2008年4月に政治学科主任、2013年4月に同学部長に就任。専門は行政学で、研究のキーワードは公共政策や政府民間関係、第3セクター、NPOなど。日本行政学会、日本政治学会、日本自治学会などに所属し、八王子市都市政策アドバイザー、小田原市市民活動推進委員会委員長など多くの公職も務める。主な共著書に、『市民のための地方自治入門(三訂版)』(実務教育出版)、『分権時代の地方自治』(三省堂)、『日本の政府体系』 (成文堂)、『三鷹市議会史』(三鷹市議会)など。

▼取材記者メモ

 湘南キャンパス3号館にある教授の研究室を訪れると、まず壁を埋め尽くす大量の専門書が目に入り、同時に学生たちからの寄せ書きや写真、ゼミであつらえたオリジナルTシャツなどが賑やかに出迎えてくれる。学生たちが議論するのであろう長机の雑然とした様子も、このゼミの熱気や楽しさ、チームワークの良さを雄弁に物語っていた。オープンキャンパスなどで見学に訪れる受験生の保護者らからも、研究室の様子には好意的な感想がよく聞かれるそうだ。基礎から専門教育へ、さらには就職活動やその後の将来設計に繋げる実践教育。コミュニケーション力の養成に力点を置き、学生一人ひとりと責任をもって向き合う。ここは、前田学部長のきめ細やかな教育活動の実証の場である。国内旅行が好きで蕎麦店を巡ることをこよなく愛する。蕎麦を楽しむ際には「ネギを入れない」と、笑顔でこだわりを教えてくれる前田学部長を、学生たちは大好きなのである。

(東海大学新聞記者・S)